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貸金庫に入れた現金は税務署にばれる?

推奨はされていませんが金融機関の貸金庫に現金を入れることは可能で、
相続税や贈与税などの対策として貸金庫に多額の現金を入れるケースがあります。

しかし貸金庫に多額の現金を入れておくことは相続税や贈与税などの税金対策には
なりません。

貸金庫に現金が入っていることは税務署にばれる?

貸金庫に現金を入れておくことが税金対策にならない理由は、
単純に貸金庫に現金が入っていることが税務署にばれているからです。

税務職員には個人や企業の不動産取引や金融取引などお金の動きを調査する権限が
与えられています。

貸金庫は金融機関が提供しているサービスで、
金融取引の一環として税務署は貸金庫の利用状況を把握しているのです。

貸金庫には入れられない物や入れてはいけない物があるので、
サービスを提供する金融機関は貸金庫に何が入っているか大体把握しています。

税務署に貸金庫の利用を把握されていて、金融機関には中身をある程度
把握されているので、貸金庫に現金を入れていることは税務署にばれるわけです。

相続時は貸金庫の確認に税務職員が立会うことも

貸金庫を利用している人が亡くなって遺産相続が発生して、亡くなった人が
利用していた貸金庫の中身を確認する際には税務職員が立会うこともあります。

貸金庫を開閉できるのは基本的に利用者本人のみで、税務調査の権限がある
税務職員でも利用者に無断で貸金庫の中身を確認することはできません。

亡くなった人が利用していた貸金庫を開けるには相続人全員の同意が必要です。

税務職員が相続人全員を集めることは難しいですから、
相続人全員が集まって貸金庫の中身を確認する際に税務職員が立会うわけです。

実際に亡くなった人が利用していた貸金庫から多額の現金が出てきた例は
少なからずあり、税務調査では貸金庫の中身は必ずと言って良いほど確認します。

また現金だけでなく有価証券や土地の権利書など相続税や贈与税に関係する物が
入っている可能性もあります。

税金に関する物は全てチェックしておく必要があるので、
税務調査では必ずと言って良いほど貸金庫の中身が確認されるのです。

貸金庫に現金が入っていることが税務署になぜばれる?

貸金庫に現金が入っていることがばれる理由は、
先にも書いたように税務署が貸金庫の利用を把握しているからです。

貸金庫を提供している金融機関は中身をある程度把握しているので、
結果的に貸金庫に現金が入っていることが税務署にばれるわけです。

もう1つ税務調査であらゆるお金の流れを過去に遡って調べていることも
貸金庫に現金が入っていることがばれる理由となります。

相続税の税務調査では亡くなった人の
 ・不動産の売買履歴
 ・預貯金の出入金履歴(10年分)
 ・有価証券の取引履歴(10年分)
 ・生命保険や健康保険など保険の支払履歴
 ・所得
などを調べます。

例えば
 ・不動産や有価証券を売却して得たお金の一部が口座に入っていない
 ・口座からたびたび100万円以上出金している
 ・受け取った健康保険金を口座に入金していない
 ・所得に対して預貯金が少ない
などといった場合には税務職員は「どこかに現金を隠している可能性がある」と
考えるのです。

貸金庫は税金対策で現金の隠し場所としてよく利用されるので、
貸金庫を利用している場合にはその中身に目を付けられるというわけです。

不動産や自動車の売買など多額のお金が動く取引はほぼ税務署に把握されており、
不審な点があると相続時でなくても税務調査が行われます。

税務職員は税金のプロであると同時に現金の隠し場所を見つけるプロでもあるので、
税務職員にばれない現金の隠し場所はほとんど無いと言って良いでしょう。

貸金庫に現金が入っていることが税務署にばれるとどうなる?

ちゃんと税金を納めていれば手元に残った現金はどう使おうが自由ですから、
貸金庫に現金を入れていることが税務署にばれてもどうもなりません。

相続時でも申告期限内で相続税の申告前なら、
貸金庫に現金が入っていることが税務署にばれても問題ありません。

貸金庫に入っていた現金を含めた相続財産が相続税の基礎控除額を超えていれば
申告、超えていなければそのまま相続すれば良いだけです。

問題なのは
 ・所得隠し、脱税目的
 ・相続税申告後に貸金庫に現金が入っていることが発覚した
といった場合です。

所得隠しや脱税目的で貸金庫に現金を入れていると
 ・無申告加算税
 ・過少申告加算税
 ・重加算税
 ・不納付加算税
 ・延滞税
などの追徴課税を納めなければいけません。

「無申告加算税」は確定申告など必要な税申告をしなかった場合に課せられるもので、
本来の納税額の15~20%が加算されます。

「過少申告加算税」は申告納税額が本来納税すべき金額よりも少なかった場合に
納めことになる追徴課税で、追加で納める税額の10~15%が加算されます。

基本的には確定申告の際に計算ミスや記入ミス、勘違いなど申告者側の意図せぬ
過失があった場合に過少申告加算税が課せられるケースがほとんどです。

税務調査が行われる前に申告者が過失に気付いて修正申告すれば、
過少申告加算税は不要です。

「重加算税」は所得隠しなど意図的に納税額を少なく申告した場合に課せられるもので、
追徴課税の中では最も重いものとなっています。

本来納税すべき金額と申告した金額の差額の35~40%が加算されます。

「不納付加算税」は期限内に源泉所得税を納めなかった場合に課せられるもので、
源泉所得税額の5~10%の加算です。

ただし不納付加算税の金額が5,000円に満たない場合は
不納付加算税の納付は免除されます。

「延滞税」は期限内に税金を納めなかった場合に課せられる利息のようなもので、
期限から2か月以内は年2.5%、2か月以降は年8.8%の加算です。

無申告加算税+重加算税+延滞税などのように追徴課税は重複するので、
納税額が大きいと追徴課税額も大きくなってしまいます。

相続税申告後に貸金庫の現金が見つかった場合

相続税を申告した後で貸金庫に現金が入っていることが発覚した場合は
 ・無申告加算税
 ・過少申告加算税
 ・延滞税
などを課される可能性があります。

相続が発生する前から貸金庫に現金が入っていることを知っていて隠していたら
重加算税を課される恐れもあります。

相続税には基礎控除額が設定されており、3000万円+600万円×相続人数の範囲に
相続財産が収まっていれば相続申告自体が不要です。

後で貸金庫の現金が見つかって相続財産が基礎控除額を超えて申告が必要となると、
無申告加算税が課される恐れがあるわけです。

相続税申告を済ませた後で貸金庫の現金が見つかると、
過失による過少申告となるので過少申告加算税が課されます。

税務署から指摘される前に貸金庫の現金を見つけて修正申告すれば、
過少申告加算税は課されません。

相続税は被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内に申告する必要があります。

被相続人が亡くなってから10か月以上経過してから貸金庫の現金が見つかると、
延滞税が発生する恐れがあるのです。

貸金庫の現金を含めても相続財産が相続税の基礎控除額内に収まっていれば、
10か月を超えていても何の問題もありません。

しかし貸金庫の現金を含めることで基礎控除額を超えると、
期限内に相続税納付ができていないことになるので延滞税が発生します。

悪質と見なされると刑事罰の対象になることも

所得隠しの金額の大きいあるいは貸金庫に現金が入っていることを意図的に
隠そうとしたなどといった場合には悪質な脱税と見なされる恐れがあります。

悪質な脱税と見なされると5年以下の懲役または500万円以下の罰金といった
刑事罰の対象となるので注意しましょう。

刑事罰に加えて追徴課税も発生しますから、税金を少なくするために所得を
隠したために罰金を含めて本来よりも多額のお金を納めることになってしまうのです。

相続税や贈与税の対策に利用できる制度

貸金庫に現金を入れていても税務署にばれますし、場合によっては所得隠しと
見なされる恐れもあるので税金対策で貸金庫に現金を入れるのは得策ではありません。

相続税や贈与税が免除もしくは軽減される制度がいくつか用意されており、
貸金庫に現金を入れるならそれらの制度を利用するのがおすすめです。

まず相続税ですが、基礎控除の他に配偶者控除・未成年者控除・障がい者控除の
3つの税額軽減制度が利用できます。

配偶者控除は簡単に言うと、亡くなった人の配偶者が相続する遺産が
法定相続分以下もしくは1億6千万円以下なら配偶者の相続税がゼロになる制度です。

配偶者の法定相続分は遺産総額の1/2ですから、亡くなった人に子が1人でも居て
法定相続通りの配分なら配偶者の相続税は配偶者控除によってゼロになります。

亡くなった人に子が居らずに配偶者が全ての遺産を相続する場合でも、
相続遺産の総額が1億6千万円以下なら相続税はゼロです。

配偶者への相続は同世代間の財産移転で、そう遠くない将来に子や孫といった
次世代への相続が発生する可能性が高いので控除額が高額に設定されています。

また亡くなった人が遺産を維持形成するのに少なからず配偶者が貢献していることも
相続税の配偶者控除では考慮されています。

未成年者控除は相続人に未成年者が含まれる場合には、その未成年者が
満18歳になるまでの年数×10万円が相続税額から控除される制度です。

例えば被相続人が亡くなった時点で相続人に10歳の子が居たとすると、
8年×10万円の合計80万円の税額控除が受けられます。

障がい者控除は相続人に障がい者が含まれる場合、その障がい者が満85歳に
なるまでの年数×10万円が相続税額から控除される制度です。
(特別障がい者は年数×20万円)

例えば被相続人が亡くなった時点で相続人に25歳の障がいを持つ子が居たとすると、
60年×10万円で合計600万円の税額控除が受けられます。

相続税の対象にならない財産

亡くなった人の所有物で金銭的な価値が高いものは全て相続税の対象となりますが、
中には高額な所有物でも相続税の対象にならないものがあります。

高額なのに相続税の対象にならないのは「宗教的な財産」です。

例えば墓地や墓石、自宅敷地内にある社や祠などの庭内神し、
仏壇・仏具、神棚・神具などが宗教的な財産となります。

生前に自分の墓地や墓石、仏壇、神棚などを用意しておけば、
配偶者や子の相続税負担が軽減できるというわけです。

ただ全ての宗教的な財産が相続税の対象にならないわけではなく、
あくまで「日常の礼拝に必要」と認められるものだけです。

過度に華美なものや豪華なもの、明らかに投資の対象であるもの、趣味で
購入したであろうものなどは宗教的な財産でも相続税の対象となる可能性があります。

贈与税の非課税制度

贈与税は一律20%と税率が高く、
その上相続税のような高額な基礎控除額も設けられていません。

そのため贈与税を逃れるために貸金庫に現金を入れるなどの財産隠しを
考えてしまうわけです。

しかし贈与税にもいくつか税額軽減制度が設けられており、
それを利用すれば贈与税負担を免除もしくは軽減できます。

まず贈与税の基礎控除を利用した「暦年贈与」を行う方法です。

贈与税には年間110万円の基礎控除額が設けられているので、
年間110万円までの贈与であれば贈与税は発生しません。

例えば遺産総額が5000万円だとすると、相続人が2人の場合は相続税の
基礎控除額は4200万円なので相続税申告が必要です。

ところが生前に2人それぞれに年間100万円ずつを10年に渡って贈与しておけば、
贈与税も相続税も納めずに済む可能性があるのです。

ただし暦年贈与は2023年末で廃止される予定で、
2024年以降は生前に贈与した財産も相続遺産と見なされて相続税の対象となります。
(暦年贈与が延長される可能性もある)

結婚、子育て資金の非課税制度

次に「結婚、子育て資金の非課税制度」を利用する方法です。

子や孫の結婚、出産、子育ての費用を贈与する場合には、
1人1000万円までは一括で贈与しても贈与税がかかりません。

ただし結婚、子育て資金の非課税制度には色々な制約があり、
まず1000万円の内結婚資金として使えるのは300万円までと決められています。

また制度の利用には専用口座の開設が必要で、結婚や子育ての目的以外では
お金を引き出すことができません。

もし専用口座から引き出したお金を結婚や子育て以外に使うと贈与税が発生します。

さらに贈与した親や祖父母が亡くなった時点で専用口座に残高があると、
その残高は相続税の対象となります。

贈与税の結婚、子育て資金の非課税制度は制約が多く、
1000万円まで贈与税がかからないこと以外のメリットがありません。

ですから結婚、子育て資金の非課税制度を利用するなら、
結婚費用や出産費用が必要になった時に親・祖父母に出してもらう方が簡単です。

ちなみに結婚、子育て資金の非課税制度も2023年末で廃止される予定となっています。

紹介した暦年贈与や結婚、子育て資金の非課税制度の他にも
 ・相続時精算課税制度(2500万円まで非課税)
 ・配偶者控除の特例(2000万円まで非課税)
などの制度があります。

ただ相続時精算課税制度は2500万円まで非課税なものの、
贈与した分は相続財産に含まれるので相続税の対象となるのです。

単に贈与税の支払いを猶予して相続税に付け替えるだけの制度なので、
税負担の軽減にはなりません。

配偶者控除の特例も相続税の配偶者控除に比べると金額が小さいので、
正直なところあまり利用する意味が無いように思えます。

まとめ

税務職員には個人や企業のお金の流れを調査する権限が与えられているため、
貸金庫に現金を入れていることは税務署に絶対にばれます。

貸金庫に現金を入れることは相続税や贈与税の対策にはなりませんから、
紹介したような各種控除制度を利用して税負担を軽減するのが賢明です。

やり方次第では相続税や贈与税を払わずに配偶者や子・孫に財産を移転させることは
可能なので、相続税や贈与税について勉強しておきましょう。

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