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贈与税申告が必要なことは現金手渡しでもばれる?

年間に一定額以上のお金を人にあげると「贈与税」がかかりますが、
現金手渡しなら税務署にばれずに贈与税が逃れられそうな気がします。

本当に現金手渡しなら税務署に贈与がばれないのか、贈与税を払わずに
お金を贈与するにはどうすれば良いのかなどについて詳しく見ていきましょう。

現金手渡しでも税務署にばれる?

口座振込だと証拠が残るけど現金手渡しなら証拠が残らないので税務署にばれないと
思うかもしれませんが、現金手渡しでも税務署にばれます。

税務職員には「税務調査」の権限が与えられていて、
個人や法人のお金の流れを詳しく調べることができるのです。

税務調査では具体的に
 ・不動産売買の履歴
 ・預貯金の出入金履歴(10年分)
 ・有価証券の異動履歴(10年分)
 ・生命保険金の支払履歴
 ・所得
などを調べられます。

贈与税がかかるほどの金額を手渡しで人にあげる場合には、
 ・不動産や有価証券の処分
 ・預貯金口座からの引き出し
 ・生命保険金の受け取り
などといったことが事前にあるはずです。

多額の現金が入ったのに口座に入れずに手元に置いていることが
税務調査によって税務署にばれます。

税務職員の過去の経験から多額の現金を手元に置くということは、
タンス預金による相続税逃れか贈与税逃れだと推測できます。

お金の動きに少しでも怪しいことがあると「お尋ね」の形で質問状が送られてきて
本格的な税務調査が行われ、現金手渡しによる贈与税逃れがばれるわけです。

なぜ税務署に目をつけられる?

税務調査の権限があると言っても、税務職員に「怪しい」と目をつけられなければ
調査されることはなく現金手渡しもばれません。

ではなぜ税務職員に「怪しい」と目をつけられるのかですが、事業者は大きなお金が
動く取引を行ったら税務署に報告する義務があることが1つ挙げられます。

事業者には「誰に対していくら支払ったか」を報告する支払調書を税務署に提出する
義務が課せられています。

金融機関や不動産会社、保険会社はもちろん貴金属販売業者なども支払調書を
税務署に提出しているのです。

不動産や貴金属などを売って多額の現金が入ったにも関わらず、
そのお金が金融機関口座に入っていないと税務職員は「怪しい」と感じるわけです。

また不動産や貴金属など高額なものを購入したのに口座からお金が出ていない、
購入していないのに口座から多額のお金を引き出している場合も目を付けられます。

個人であろうと法人であろうと、
税務署のあずかり知らぬところで大金を動かすことはできません。

大金が動いていて、その流れに怪しいところがあれば税務職員に目をつけられて
本格的な税務調査へと発展するのです。

関係者の密告やSNSの投稿がきっかけでばれることも

税務職員に目をつけられる主なきっかけは支払調書ですが、
関係者の密告やSNSの投稿がきっかけで税務調査が行われることもあります。

例えば税務署の目を上手く潜り抜けて多額の現金を手渡しで贈与されたことを、
友人などごく近しい人に話したとします。

他人が大金を手に入れた話を聞くと誰しも羨ましいと思いますし、それが正規の手段で
ないとなると羨ましいよりズルいという気持ちの方が強くなるものです。

ズルいという気持ちが高じると大金を手に入れた人を懲らしめてやろうとなって、
税務署への密告に繋がります。

またSNSに大金を手に入れたことをほのめかすようなことを投稿したことで
税務署に目をつけられて税務調査に入られることもあります。

実際に芸能人がYouTubeで「貯金がいくらある」といった話をしたら税務署から
「お尋ね」が来たといったことがあるのです。

この話はSNSも贈与税も関係ないですが、SNSやYouTubeの投稿や発言を
きっかけとして税務調査に乗り出すことも十分に考えられます。

冗談で言ったことに対して税務署からの「お尋ね」が来ることもあるので、
SNSでお金に関しての不用意な発言は控えるのがベターです。

具体的にどんなことをすると税務署にばれる?

具体的にどういったことをすると、
贈与税を払わないといけないことが税務署にばれるのでしょうか?

1つは「不動産の名義変更」です。

親が所有している不動産を生前に子に贈与するのに名義変更を行うと、
不動産を贈与したことが税務署に100%ばれます。

不動産の名義変更は法務局で行いますが、
法務局は不動産の名義変更が行われたことを税務署に報告します。

また購入や名義変更などで不動産を取得すると「登録免許税」を納めなければならず、
登録免許税をいくら納めたかで不動産の価値が税務署にばれるのです。

不動産の固定資産税評価額に対して購入や贈与の場合は2%、
相続の場合は0.4%の登録免許税を納めなければなりません。

登録免許税をいくら納めたかで取得した不動産の固定資産税評価額が分かりますから、
名義変更だと贈与税が発生するかどうかが税務署にばれるわけです。

贈与税について税務署に目をつけられがちなのが「自動車の購入や名義変更」です。

自動車を取得すると運輸局に登録されて、運輸局から税務署に購入や名義変更で
新たに自動車が登録されたことが税務署に報告されます。

新たに自動車を登録したにも関わらず、
口座から自動車購入費用に相当する金額が動いていないと贈与が疑われます。

税務署はネットオークションもチェックしている

税務署はネットオークションもチェックしており、
所得に合わない高額商品を落札すると税務職員に怪しまれる恐れがあるのです。

会場に足を運んで札を上げるオークションならともかくネットオークションは
匿名で参加できるので身元がばれないと思いがちです。

しかしオークション運営会社には身元を明かしてしますから、
運営会社にお伺いを立てることで税務署は落札者の身元が把握できます。

ネットオークションでも高額商品を落札した、高額でなくても頻繁に落札していると、
税務署に目をつけられる恐れがあります。

そもそも贈与税はどういった場合にかかる?

現金を手渡ししていることも税務署にばれる恐れがありますが、そもそもお金を含む
財産を贈与したからと言って必ず贈与税が発生するわけではありません。

贈与税が発生するのは「年間110万円を超える贈与」が行われた場合のみです。

年間に贈与された財産の総額が110万円以下であれば税務署に申告する必要も
贈与税を納める必要も無いのです。

ただし贈与税を支払うのは贈与された側ですから、複数人から贈与された場合には
合計額が年間110万円を超えると贈与税の対象となります。

例えば父と母からそれぞれ100万円ずつ贈与されたとします。

父と母それぞれから貰った金額は贈与税の対象となる年間110万円を超えませんが、
合計すると200万円で110万円を超えるので贈与税の対象となるということです。

贈与する側ではなく贈与される側を基準に考えて受け取った金額が年間110万円を
超えたら贈与税を納めなければなりません。

贈与税はいくらぐらい納める?

贈与税は所得税などと同じ累進課税で、
贈与された金額が大きくなるほど税率が高くなって納める額も大きくなるのです。

贈与税には
 ・一般贈与財産にかかるもの
 ・特例贈与財産にかかるもの
の2種類があり、贈与する財産の種類によっても税率が変わります。

ちなみに「直系尊属(親や祖父母など)から成年者への贈与」は「特例贈与財産」、
 ・夫婦間の贈与
 ・兄弟姉妹間の贈与
 ・直系尊属(親や祖父母など)以外からの贈与
 ・直系尊属から未成年者への贈与
の場合は「一般贈与財産」と見なされます。

一般贈与財産の贈与税率は以下の通りです。
 ・200万円以下 10%
 ・200万円超~300万円以下 15%
 ・300万円超~400万円以下 20%
 ・400万円超~600万円以下 30%
 ・600万円超~1000万円以下 40%
 ・1000万円超~1500万円以下 45%
 ・1500万円超~3000万円以下 50%
 ・3000万円超 55%

特例贈与財産の贈与税率は
 ・200万円以下 10%
 ・200万円超~400万円以下 15%
 ・400万円超~600万円以下 20%
 ・600万円超~1000万円以下 30%
 ・1000万円超~1500万円以下 40%
 ・1500万円超~3000万円以下 45%
 ・3000万円超~4500万円以下 50%
 ・4500万円超 55%
となっています。

贈与額が300万円までは同じですが、300万円を超えると金額によって
一般贈与財産と特例贈与財で納める贈与税額が変わります。

贈与税は控除額を超えた分に課税される

贈与税は贈与された全額ではなく、
年間110万円の控除額を超えた分について課税される仕組みです。

例えば親から子に700万円贈与したとすると、特例贈与財産となるので全額に対する
贈与税だと30%の210万円、控除額が10万円で200万円納めることになります。

しかし年間110万円を超えた分に対する課税なので、700万円から110万円を引いた
590万円が贈与税の対象となり税額は20%の控除額30万円で88万円となるのです。

特例贈与財産を500万円贈与された場合には贈与税は88万円ですが、
贈与されたのが一般贈与財産と見なされると贈与税額が変わります。

700万円から110万円を引いた590万円が贈与税の対象で、
一般贈与財産だと税額30%の控除額65万円で贈与税額は112万円です。

贈与額が700万円だと特例贈与財産の方が贈与税額が少ないですが、
金額によっては一般贈与財産の方が贈与税額が少なくなることもあります。

贈与税の申告期限

贈与税の申告には期限が設けられており、申告が必要な贈与があったにも関わらず
期限までに申告しないと延滞税などを課せられる恐れもあるのです。

贈与税の対象となる期間は毎年1月1日~12月31日まで、
申告期限は贈与があった翌年の2月1日から3月15日までとなっています。

例えば2022年中に親から110万円を超える財産を贈与されたら、
2023年3月15日までに贈与税を申告して納付しないといけません。

3月15日までに贈与税の申告を正しく済ませないと
 ・無申告加算税
 ・過少申告加算税
 ・重加算税
 ・延滞税
といった追徴課税となります。

無申告加算税は申告が必要な贈与があったにも関わらず申告しなかった場合の
追徴課税で、本来の贈与税に5~20%を加算した額を納めなければなりません。

過少申告加算税は贈与税を申告して納付したものの、申告にミスがあって
本来の贈与税よりも少なく申告・納付してしまった場合の追徴課税です。

本来の贈与税額から既に申告している贈与税額を差し引いた部分に
5~10%加算した金額を追加で納めることになります。

ただし税務署に指摘される前にミスに気付いて修正申告した場合は過少申告加算税は
課されません。

重加算税は過失ではなく意図的に贈与税の申告をしなかった
あるいは過少に申告した場合の追徴課税です。

無申告だと納める贈与税額の40%、過少申告だと本来の贈与税額から
既に申告している贈与税額を差し引いた金額の35%が加算されます。

重加算税は無申告加算税や過少申告加算税にプラスされますから、
無申告だと最大60%増、過少申告だと最大50%増の金額を納めることになるのです。

延滞税は税金滞納に対する利息みたいなもので納付期限から2か月以内は
年2.5%、2か月以降は年8.8%が加算され、無申告加算税などと重複します。

悪質な脱税と見なされると刑事罰の対象になることも

贈与税を申告しないあるいは少なく申告すると「脱税」と見なされて
刑事罰の対象となる恐れもあるのです。

意図的な脱税だと無申告加算税や過少申告加算税、重加算税に延滞税が課された
上に5年以下の懲役または500万円以下の罰金となります。

過失による無申告・過少申告でも脱税の金額が大きいと1年以下の懲役または
50万円以下の罰金となることがあります。

数百万円・数千万円ならともかく数十万円の贈与税申告を怠ったために
5年以下の懲役または500万円以下の罰金を課せられるのは割に合いません。

年間110万円を超える贈与を受けた場合には、金額に関わず期限内に
しっかりと申告をして余計に税金を納めないで済むようにしましょう。

贈与税がかからない贈与方法

控除制度を利用するなどルールに則ることで贈与税を支払わずに贈与を
受けることもできます。

贈与税がかからない贈与方法の1つ目は「暦年贈与」です。

年間110万円の贈与税の基礎控除を利用して、
毎年110万円以下の金額を数年に渡って贈与を受け続けるのが暦年贈与です。

大金を贈与するには長い年月がかかりますが、
親子間で暦年贈与を利用すれば贈与税や相続税の負担を軽くできます。

ただし毎年決まった金額の贈与だと暦年贈与ではなく「連年贈与」と見なされて
贈与税の対象となる恐れがあります。

連年贈与はあらかじめ決まった金額を分割で贈与する方法で、
例えば1000万円を年100万円ずつ10年に渡って贈与するといったことです。

1年単位では贈与税の基礎控除額に納まっているものの、最初に1000万円の贈与が
決まっているので連年贈与だと1000万円に対して贈与税が発生します。

毎年贈与契約書を作成するあるいは贈与金額を変更するなど、
連年贈与にならない対策を施しましょう。

ちなみに贈与契約書は単に作成するのではなく、
公証人による確定日付が付されているものでないと意味がありません。
(後付けで作成したと疑われないため)

贈与税の控除制度

贈与税には基礎控除以外にも控除制度が用意されており、
これを活用すれば贈与税の負担が大幅に軽くなります。

1つは「配偶者控除の特例」で、婚姻期間が20年を超える夫婦間で居住用不動産の
贈与が行われた場合には最大2000万円まで贈与税の控除が受けられます。

年間110万円の基礎控除とは別ですから、
夫婦間の居住用不動産贈与では最大2110万円の控除が受けられるのです。

もう1つは「結婚、子育て資金の非課税制度」で、親や祖父母など直系尊属から結婚や
出産、子育てに必要な資金を贈与してもらう場合は1000万円まで控除が受けられます。
(結婚に関する資金は300万円まで)

ただし贈与してもらった資金は結婚や子育てにしか使えず、結婚や子育て以外の目的に使うと贈与税が発生します。

専用口座に贈与してもらった資金を入金しておき、
結婚や子育てに使ったことが証明できる領収書を提出しないと出金できません。

「教育資金の非課税制度」というものもあり、教育資金として子や孫に
親や祖父母から贈与されたお金は1500万円まで控除となります。

こちらも先の「結婚、子育て資金の非課税制度」と同じで、
専用口座に入金して領収書提出でお金を引き出す形式です。

また、期限が延長される可能性はあるものの「結婚、子育て資金の非課税制度」も
「教育資金の非課税制度」も現状では2023年3月末までしか利用できません。

生活費や教育費は都度払いなら贈与税非課税

生活費や教育費は都度払いであれば贈与税の対象にはなりません。

資金が必要になるたびに贈与を受ければ、「結婚、子育て資金の非課税制度」や
「教育資金の非課税制度」を利用する必要は無いのです。

「結婚、子育て資金の非課税制度」や「教育資金の非課税制度」は使いにくいですから、
結婚・子育て・教育の資金は必要な時に贈与してもらうのがベターです。

まとめ

税務署にはお金の流れを調査する権限が与えられているため、
現金手渡しでもばれずに贈与税を逃れることはできません。

下手に贈与税を逃れようとすると追徴課税となりますし、
脱税と見なされると刑事罰の恐れもあります。

紹介した控除制度などを活用すれば贈与税負担を軽くできるので、
絶対に贈与税逃れを企むようなことは止めてください。

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