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農地相続するサラリーマンがすべきこととは?

「農業を営んでいた親が亡くなって農地を相続する」

自分自身の農業を営んでいれば何の問題もありませんが、
サラリーマンだと農地相続に頭を抱えてしまうケースも少なくないはずです。

ではサラリーマンが農地相続したらどうすれば良いのかを詳しく見ていきましょう。

農地相続したらまずは相続登記

サラリーマンであろうとなかろうと農地であろうとなかろうと、
亡くなった親から土地や建物を相続したらまずは相続登記が必要です。

要するに、相続した土地や建物の名義を亡くなった親から自分自身に変更する
手続きを行うということです。

宅地であれば法務局のみの手続きでOKですが、
農地の場合は法務局に加えて農業委員会でも手続きをしなければいけません。

農業委員会は市町村に設置された行政委員会で、地元農業者の代表で
構成されていて農業全般の問題を解決することが目的の機関です。

農地利用の最適かも農業委員会の目的の1つとなっており、
農業委員会の許可なしでは農地に手を加えることができないのです。

相続登記は売買による名義変更ではありませんから許可が下りないことはないものの、
農地の相続登記するには農業委員会に届出をしないといけません。

法務局での相続登記

農地に限らず土地や建物などの不動産を相続したら、
相続する不動産を管轄する地域の法務局で相続登記の手続きを行います。

法務局での相続登記には
 ・登記申請書
 ・亡くなった人の戸籍附票
 ・亡くなった人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本
 ・相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書
 ・農地を相続する人の住民票
 ・相続する農地の固定資産税評価証明書
 ・遺産分割協議書
といった書類が必要となります。

戸籍附票と戸籍謄本は亡くなった人の本籍地で取得でき、
遠方の場合は郵送での取得も可能です。

ただし戸籍謄本については、亡くなった人が本籍地を変更していると
出生から亡くなるまでに本籍地とした全ての場所で取得しなければいけません。

遺産分割協議書は複数の相続人でどのように遺産を分けるかを記した書類ですから、
相続人が1人の場合は不要です。

戸籍附票や戸籍謄本、印鑑証明書、住民票の取得には
それぞれ1通当たり300~700円程度の手数料がかかります。

法務局での相続登記手続きで使用する戸籍附票などは基本的に原本で、
コピーしたものでは受け付けてもらえません。

また相続登記には登録免許税も必要で、
相続する農地の固定資産税評価額の0.4%を登録免許税として納めることになります。

相続登記について分からないことがある場合は、
登記の専門家である司法書士に相談しましょう。

遺産分割協議書の作成から法務局での手続き代行まで司法書士にお願いできます。

農業委員会での届出

法務局で相続登記が完了したら、
次は農業委員会に農地を相続したことの届出を行います。

農業委員会での届けには
 ・農地法の規定による届出書
 ・相続した農地の登記事項証明書
の2つの書類が必要です。

相続した農地の登記事項証明書は法務局で取得できるので、
相続登記の際に申請しておきましょう。

農業委員会は基本的に各市町村に1つなのですが、
農業が盛んな地域には市町村に複数の農業委員会が存在することもあります。

反対に農業があまり盛んでない地域だと、
市町村に農業委員会が存在しないこともあるのです。

相続する農地がある地域に農業委員会が複数あるもしくは無いといった場合は、
市町村役場にどこで相続の届出をすれば良いのかを問い合わせましょう。

相続登記に期限は無いが・・・

2023年1月現在は相続登記に期限は設けられておらず、
農地を相続しても亡くなった親名義のままで置いておくことも可能です。

ただし2024年4月1日以降は相続登記が義務化され、
3年以内に相続登記しないと10万円の過料となってしまいます。

現状では相続登記せずに置いておくことができますが、
義務化の直前は窓口が込み合う恐れがあるので早めに相続登記するのがベターです。

農業委員会への届出は相続開始から10か月以内に行わなければならず、
10か月を超えると10万円の過料となります。

農業委員会への届出では登記事項証明書を提出しますから、
農地相続では現状でも相続開始から10か月以内の相続登記が必要です。

サラリーマンが相続した農地の利用方法

サラリーマンが相続した農地の利用方法としてまず考えられるのが
「自分自身で農地として利用すること」です。

脱サラして一から農業を始めるのは大変ですが、
親が農業を営んでいたのであれば多少のノウハウを持っている可能性があります。

また父親が亡くなっても母親が健在であれば、
母親にイロハを教えてもらって農業を始めることもできます。

亡くなった親が現役で農業をしていた場合は、
農地だけでなく農機具も残っているはずです。

さらに農作物の販路や種や苗の仕入れ先も引き継げる可能性がありますから、
全くの素人よりは農業を始めやすいのです。

相続した農地はそのまま農地として利用するのが一番手間がかかりません。

相続した農地をそのまま自分で使うと相続税が猶予されることも

相続した農地で自分が農業を営む場合には、
相続した農地分の相続税が猶予される可能性があります。

本来は農地を含む相続遺産が3000万円プラス600万円×相続人数を
超えた分については相続税を納めないといけません。

ところが相続した農地で自分が農業を営むと、
農地分の相続税を実質的に払わなくて済む可能性があるのです。

農業を営み続けている限りは猶予の延長が受けられ、
20年以上営農を続けると免除されるので実質的に相続税を払わなくて済みます。

ただし相続税の猶予を受けるには農地の被相続人と相続人それぞれに
要件を満たしていることが必要です。

また相続税がゼロであっても納税猶予の届出とともに相続税申告をしなければ
いけません。
(納税猶予の届出は3年ごとに提出が必要)

必要な書類を農業委員会に発行してもらうことになるので、
相続税の猶予を受けたい場合は農業委員会に相談しましょう。

農地として貸す

相続した農地を自分で使うのではなく、
農地として他の農家の人に貸して使ってもらう方法もあります。

田舎で近隣との関係が密だと口約束だけということもありますが、
たとえ親戚であっても農地を貸すならしっかり契約書を交わした方が良いです。

口約束だけだと後々に地代や農地の所有権で揉める可能性が高いので、
契約書を交わして耕作権を設定しておきましょう。

耕作権を設定しておくと農業委員会が管理する農地基本台帳に記載されますから、
後に所有権で揉める心配がありません。

農地の貸し借りには農業委員会の許可が必要で、
借り手についても含めてまずは農業委員会に相談してください。

宅地などに転用

相続した農地を農地として利用することが難しい場合は宅地などに
転用する方法もあります。

サラリーマンで自分で農業を営むのが難しく借り手も見つからないといった時には
宅地などへの転用を選ぶケースが少なくありません。

相続した農地の面積が広いなら賃貸アパートを建ててオーナーとなって
家賃収入を得ることも可能です。

アパートを建てられるほど広くないなら、
月極駐車場やコインパーキングにして料金収入を得るという選択肢もあります。

通勤や生活に支障が無いのであれば、
相続した農地に自分の家を建てて住むこともできます。

農地は基本的に日当たりが良いですから、
ソーラーパネルを設置して太陽光発電所として活用するのも良いかもしれません。

ただ農地を宅地に変更すると固定資産税評価額が上がり、
農地の時よりも固定資産税が高くなるので注意してください。

また相続した農地の転用には農業委員会の許可が必要ですし、
農地の場所によっては許可を取るのが難しいケースがあります。

一口に農地と言ってもいくつか種類があり、相続した農地が
 ・農用地区域内用地
 ・甲種農地
 ・第1種農地
のいずれかだと転用の許可が取れない可能性が高いです。

「農用地区域内用地」は簡単に言うと農業に適した農業をするための土地と
市町村が定めたもので、基本的に農業以外に使うことが認められません。

「甲種農地」と「第1種農地」は農用地区域内用地に準ずるもので、
農業に適した土地なので転用が認められる可能性は低いです。

道路に面している土地でないと建物は建てられませんから、
相続した農地が道路に面していないと許可が下りても転用は難しいです。

転用が難しい農地の利用方法

農用地区域内用地などで転用が難しい農地を相続した場合には「市民農園」として
利用する方法があります。

市民農園は農家以外の人が家庭菜園などをするのに提供する農地のことです。

野菜や果物、草花などを育てる用地として相続した農地を農家以外の人に貸して
使ってもらうのです。

転用が難しく、農家の借り手が見つからないといったケースでは
市民農園の選択肢も検討してみてください。

ただ勝手に市民農園として貸し出すことはできませんから、
まずは農業委員会に相談しましょう。

休耕地にする

相続した農地の転用も貸し出しも難しい場合には「休耕地」にしてしまう選択肢も
あります。

あまりおすすめできる選択肢ではありませんので、
他に選択肢が無いということでもなければ休耕地以外の利用方法を検討してください。

特に何らかの手続きが必要なわけではなく、
単に何もせずに農地を放置しておくだけです。

ただし農地相続した以上は放置している休耕地であっても
固定資産税は払わないといけません。

また放置した農地に雑草が生い茂ると害虫が発生する恐れがあり、
周辺に他の農地や住宅がある場合には草刈りを定期的に行う必要があります。

農機具などを収納していた小屋などの建物も倒壊や野生動物の住処となる
恐れがあるので、休耕地にするなら解体しておきましょう。

放置すると言っても全く何もしなくて良いわけではありませんし、
固定資産税もかかるのでできれば休耕地という選択肢は選ばない方が良いです。

農地を売却する

相続した農地の活用が難しく、
持っていても仕方がないのであれば売ってしまうのも選択肢の1つです。

農地の売却には
 ・農地のまま売却
 ・宅地に転用して売却
の2つの方法があります。

農地のまま売却すれば転用の手間が省けますが、
農地は評価額が低く抑えられているので高値で売ることは難しいです。

また年間営農期間や農機具の有無などの条件をクリアしないと農地の購入ができず、
農家自体が減っている現状では農地の買い手を探すのも簡単ではありません。

宅地に転用すれば固定資産税評価額が上がりますから、
農地のままよりは高く売れる可能性が高いです。

ただ農地を宅地に変更するには農業委員会の許可が必要なのですが、
利用目的が決まっていないと転用は認められません。

要するに宅地に転用して売却するには、
先に売却先を決めてからでないと転用できないということです。

相続した農地の種類によっては宅地に転用したくてもできないこともありますから、
農地を売却すること自体が簡単ではないのです。

農地相続を放棄する

相続する農地の活用や売却が難しいのであれば、
いっそのこと相続自体を放棄してしまう方法もあります。

相続開始から3か月以内に家庭裁判所に申し立てをすることで相続放棄が可能です。

ただし農地など特定の相続だけを放棄することはできず、
全ての相続を放棄することになります。

相続放棄すると実家の建物はもちろん、
亡くなった親が遺した預貯金や現金も相続できなくなってしまいます。

また相続放棄の手続きをする前に、亡くなった親が遺した預貯金や現金を
私的に使うと相続の単純承認となって相続放棄が認められません。

さらに相続放棄しても親が遺した農地の管理義務は放棄できないので、
国庫に帰属されるまで草刈りなど農地の管理を行う必要があります。

今後は国に農地を寄贈することも可能に

現状では相続したくない農地は相続放棄して国に帰属されるまで待つしかありませんが、
今後は国に寄贈することも可能となります。

2023年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が始まり、
この制度を利用すれば活用や売却が難しい農地を国に寄贈できます。

ただしこの制度を利用するには、土地に建物が無い、担保権が設定されていないなど
寄贈したい土地が必要条件をクリアしていなければいけません。

また相続した農地を国に寄贈するには負担金を納める必要があります。

農地の負担金は原則20万円ですが
 ・市街化区域もしくは用途地域が指定されている地域
 ・農用地区域
 ・土地改良事業等の施工区域
の中にある農地については別途計算式に則って負担金を算出します。

例えば300㎡の農地だと1㎡あたり850円に298,000円をプラスした553,000円を
負担金として納めることになるのです。

農地の面積が大きくなるほど負担金も大きくなる可能性があり、
面積によっては負担金が100万円を軽く超えることも十分に考えられます。

相続土地国庫帰属制度についてより詳しく知りたい場合は、
法務局や弁護士、司法書士など専門家に相談してください。

まとめ

サラリーマンの農地相続について詳しく見てきましたが、
自分で使うにしろ貸すにしろ転用するにしろ色々と面倒なことが多いです。

放棄や国への寄贈も簡単ではありませんから、
将来的に可能性があるなら早い内に農地相続について検討しておきましょう。

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