「宝くじの当選金は非課税」と一般的に思われていますが、
完全に非課税というわけではありません。
宝くじで高額当選した場合に注意したい税金について詳しく見ていきましょう。
宝くじの当選金が非課税なのは所得税と住民税だけ
宝くじの当選金が非課税対象となっているのは
・所得税
・住民税
の2つだけです。
宝くじの当選金は所得になりますから、
本来なら一時所得として確定申告をして所得税を納めなければなりません。
しかし宝くじに関する法律である「当せん金付証票法」で、
宝くじの当選金には所得税を課さないことが定められています。
要するに法律で宝くじの当選金は非課税所得と定められているので
所得税がかからないわけです。
住民税も所得に対して課せられる税金ですから、
非課税所得である宝くじの当選金には課せられないことになります。
宝くじの当選金に所得税と住民税がかからないのはなぜ?
宝くじの当選金に所得税と住民税がかからないのには、「法律で決まっているから」に
加えてもう1つ「購入時点で税金を払っているから」という理由もあります。
実は宝くじの販売元は47都道府県と20指定都市で、
経費と販売手数料を差し引いた宝くじの収益は地方自治体に入るのです。
宝くじの収益の内、当選金に回るのは約47%、経費や広報費が約13%、
残りの約40%が地方自治体の収益となります。
宝くじを購入した時点で代金の4割を税金として払っているも同然で、
その上に宝くじの当選金に所得税と住民税を課すと二重課税となってしまいます。
法律で決まっている上に二重課税となるので宝くじの当選金には所得税と住民税が
かからないわけです。
贈与税と相続税の課税対象
宝くじの当選金にも課せられる恐れがある税金があり、それが贈与税と相続税です。
例えば宝くじで5億円が当たったので親に1億円プレゼントするといった場合には、
親に贈与した1億円に対して贈与税が課せられます。
また宝くじ当選者が当選金を使い切れずに亡くなると、
残った当選金を相続する遺族に相続税がかかります。
相続税は当選者が亡くなってからのことなのでともかくとして、
気を付けなければならないのは贈与税の方です。
高額当選者が親など周りの人にお金を配ることがよくありますが、
金額によってはお金を貰った人が高額な贈与税を払うことになるので注意しましょう。
共同購入で高額当選した場合は要注意
家族や友人などと共同購入した宝くじが高額当選して当選金を山分けする場合には、
やり方次第で贈与税が発生する恐れがあるので特に注意が必要です。
共同購入した宝くじの当選金は共同購入者全員に受け取る権利があるので、
贈与税がかかることなく山分けすることは可能です。
ただし当選金を受け取りを代表者1人で行うと、
山分けする際に贈与税が発生してしまう恐れがあります。
高額当選金の受け取りは金融機関で行われますが、
受け取りの際に「宝くじ当せん証明書」というものを貰えます。
もし税務署の調査が入っても当せん証明書があればあらぬ疑いをかけられずに
済むのです。
当選金を代表者1人で受け取りに行くと、
当せん証明書が貰えるのは受け取りに行った代表者1人だけとなります。
当せん証明書を持っている代表者1人が他の共同購入者と当選金を山分けすると、
代表者から他の共同購入者への贈与とみなされて贈与税が発生してしまいます。
共同購入者全員で当選金を受け取りに行くか、
代表者1人で受け取りに行くなら全員の署名が入った委任状を持って行きましょう。
全員で受け取りに行くか全員分の委任状があれば共同購入者全員に対して
当せん証明書が交付されるので、当選金を山分けしても贈与税は発生しません。
ネット購入での高額当選では贈与税は避けられないことも
最近は宝くじをネットでも購入できますが、
ネット購入した宝くじで高額当選した当選金を山分けすると贈与税は避けられません。
宝くじの公式サイトでは共同購入が可能ですが、
提携している金融機関のサイトでは共同購入は難しいです。
またネット購入した宝くじが当選すると、
自動的に指定した金融機関口座に当選金が振り込まれます。
公式サイト以外でネット購入した宝くじが高額当選して口座に振り込まれた当選金を
山分けすると贈与と見なされて贈与税が発生するのです。
当選金の山分けで贈与税が発生しないようにするには、
公式サイトか売場で共同購入しないといけません。
宝くじで高額当選したことは税務署にばれない?
宝くじで高額当選したこと自体は税務署にはばれませんし、
ばれたところで所得税と住民税は払わなくて良いので問題無いです。
ただ宝くじの当選金を口座への振込で受け取った場合には、
多額の振り込みが行われたことが税務署にばれます。
多額の現金を持ち歩くのは不安なので、
当選金の受け取りは現金ではなく口座への振込を選択するケースが多いです。
金融機関を含めて多額の現金をやり取りする事業者には、誰に何の目的で
いくら支払ったかを証明する「支払調書」を税務署に提出する義務があります。
数千万円あるいは億単位のお金が金融機関から当選者の口座に振り込まれたことは
金融機関が提出する支払調書によって税務署に把握されるわけです。
当選金を現金で贈与すれば税務署にばれない?
宝くじの当選金を現金で受け取って、
その現金を親や友人などの近しい人に配れば税務署にばれないのでしょうか?
当選金を現金で受け取れば、
宝くじで高額当選したことも多額の現金を受け取ったことも税務署にはばれません。
現金で受け取った当選金を親や友人などにあげたとしても税務署にはばれないので、
贈与税も払わずに済みます。
ただし現金で受け取った親や友人が収入に見合わない高額商品を購入すると、
税務署からお尋ねが来る可能性が高いです。
要するに収入に見合わない高額商品を購入する資金はどうやって調達したのかを
税務署が聞いてくるわけです。
税務署のお尋ねに対して親や友人が「宝くじの当選金を分けてもらった」と
正直に回答すると贈与税の対象となってしまいます。
正直に回答したら贈与税の対象になるからと言って嘘の回答をすると
余計に怪しまれて本格的な税務調査が行われて贈与の事実が発覚するのです。
また親や友人が貰ったお金を口座に入れても、
支払調書によって口座に多額の現金を入れたことが税務署にばれます。
口座に入れた多額の現金はどこから調達したものかを税務署に聞かれますから、
現金でやり取りしたところで贈与がばれないことはほとんどありません。
現金でやり取りして贈与税を逃れようとしたとして税務署に良くない印象を持たれると
監視対象となる恐れもあります。
当選金を現金で受け取って山分けしたことは税務署にばれませんが、
山分けしたお金を使うと税務署にばれます。
余計な動きをして税務署にあらぬ疑いを持たれるのも面倒ですから、
贈与税を逃れるために当選金を現金で受け取ることは止めた方が良いでしょう。
当選金の山分けで納めることになる贈与税はいくら?
贈与税は他の税金よりも税率が高く設定されている上に累進制ですから、
贈与額が高額になるほど納める贈与税額も大きくなります。
贈与税には年間110万円の基礎控除額が設けられており、
110万円を超えた分に対して10~55%の贈与税が発生します。
例えば当選金が5億円で親に1億円あげたとすると、
1億円から基礎控除額110万円を引いた9890万円に対して贈与税がかかります。
子から親への贈与では一般税率が適用されますから、
税率は55%で控除額は400万円です。
親に1億円あげた場合の贈与税額は、
(1億円-110万円)×0.55-400万円=5039万5000円となります。
親から子への贈与だと特例税率となり、
税率は55%で同じですが控除額が640万円で贈与税額は4799万5000円です。
宝くじの当選金を親に1億円分けてあげても半分以上は贈与税として納めることに
なってしまうのです。
贈与税を発生させずに当選金を山分けするには
億単位の当選金を得たら少しぐらいは親に分けてあげたいと思いますが、
何とか贈与税を発生させずに親に分けてあげる方法は無いのでしょうか?
宝くじの当選金の内110万円を超える金額を親に分けてなおかつ贈与税を払わずに
済ますには、親を共同購入者にする方法があります。
ネット購入だと購入時点で共同購入グループを作成しないといけませんが、
売場での購入ならグループを作成する必要はありません。
売場で購入した宝くじが高額当選したら、
親を共同購入者として一緒に当選金を金融機関に受け取りに行けば良いのです。
共同購入者として一緒に受け取りに行った親も宝くじ当せん証明書が貰えるので、
当選金から110万円を超える金額を親に分けてあげても贈与税はかかりません。
生活費の援助なら年間110万円を超えても贈与税はかからない
日常生活に必要な費用として渡すお金に対しては、
金額が年間110万円を超えていても贈与税はかからないことになっています。
ただし生活費として渡したお金の内使い切れなかった分を貯蓄に回すと
贈与と見なされる恐れがあるので注意が必要です。
生活に必要な物を購入する際にお金を渡したり、光熱費を代わり払ってあげるなど
まとまった現金を渡すのではなく都度払いにすると贈与と見なされる恐れがありません。
暦年贈与
「暦年贈与」であれば贈与税を発生させずに親や子にまとまった金額の当選金を
分けてあげることが可能です。
贈与税の基礎控除額内の金額を何年にも渡って贈与するのが暦年贈与です。
贈与税の基礎控除額は年間110万円ですから、年間110万円の贈与を何年も
続けることで贈与税を発生させずに宝くじの当選金を分けてあげることができるのです。
数千万円や億単位のお金を贈与することはほぼできませんが、
数百万から1000万円ぐらいなら暦年贈与で贈与税を回避できます。
贈与税はあげる側ではなく貰う側が納めるものですから、複数人への贈与であれば
ある程度まとまった金額を分けてあげることも可能となります。
例えば子から親に贈与する場合は、両親が健在なら父と母それぞれに
年間110万円ずつ分けてあげれば年間220万円の贈与が非課税でできます。
ただし基礎控除額内でも毎年決まった額の贈与や最初に決めた金額に達するまで
毎年贈与を続けるといった場合には「連年贈与」と見なされる恐れがあります。
連年贈与は贈与税の対象となるので、1年ごとに贈与金額を変えたり
毎年「贈与契約書」を作成するなど暦年贈与と見なされる工夫をしましょう。
ちなみに贈与契約書は後から作成することもできるので、
公証役場で確定日付を付してもらったものでないと暦年贈与の証拠にはなりません。
親から子への贈与なら相続時精算課税制度を利用する方法も
宝くじの当選金を親から子に分けてあげる場合には「相続時精算課税制度」を
利用することで贈与税が発生せずにまとまった金額を贈与できます。
相続時精算課税制度は親や祖父母など直系尊属から生前に財産を分けてもらい、
税金は直系尊属が亡くなって相続が発生した時に精算する制度のことです。
相続時精算課税制度を利用すれば、
親から子に対して2500万円までなら贈与税を発生させずに贈与することが可能です。
2500万円を超えた分については一律20%の贈与税が発生します。
ただし贈与した親が亡くなった時には贈与を受けた子は生前に非課税で
贈与された分も相続財産に含めて相続税を支払わなければいけません。
また2500万円を超える贈与で20%の贈与税を納めた場合は、
本来の相続税から納めた贈与税額を差し引いた金額を納めることになります。
贈与税よりも相続税の方が基礎控除額が大きい上に税率も低いですから、
相続時精算課税制度を活用すれば子の税負担を軽くできます。
贈与税逃れが税務署にばれたらどうなる?
宝くじの当選金を現金で受け取って山分けして贈与税逃れをしたことが
税務署にばれると、山分けした時点に遡って贈与税申告をしなければいけません。
ただし単に贈与税申告をすれば終わりではなく、
・無申告加算税
・過少申告加算税
・重加算税
・延滞税
といった追徴税が課されるのです。
無申告加算税は必要な贈与税申告をしなかった場合に課される追徴税で、
贈与税額が5~20%増しとなります。
過少申告加算税は計算や記入のミスなど過失によって贈与税を少なく申告した場合の
追徴税で、納めた贈与税額と正しい贈与税額の差額を5~10%増しで納めます。
重加算税は故意に贈与税を申告しなかったり少なく申告した場合に課される追徴税で、
贈与税額が無申告だと40%、過少申告は35%増しとなります。
延滞税は納税が遅れたことに対する利息みたいなもので、
納付期限から2か月以内は年率2.4%、2か月以降は年率8.8の加算です。
無申告加算税と過少申告加算税は基本的に過失による無申告や過少申告に
課される追徴税です。
税務署に贈与税が発生することをばれないように宝くじの当選金を現金で受け取って
山分けしたとなると過失ではなく故意と見なされる恐れが大いにあります。
故意の贈与税逃れと見なされると無申告加算税や過少申告加算税に重加算税が
プラスされます。
さらに悪質と見なされると脱税で刑事訴追されて5年以下の懲役または
500万円以下の罰金を課されることになる恐れもあるのです。
贈与税は税率が高いので無申告加算税や過少申告加算税に重加算税が
プラスされると、山分けした当選金の大半を贈与税で納めざるをえなくなってしまいます。
その上に脱税で刑事訴追されるとシャレになりませんから、
間違っても贈与税逃れは考えないようにしてください。
まとめ
宝くじで高額当選したこと自体は税務署にばれませんし、当選金を現金で受け取れば
山分けしても税務署にばれないので贈与税を払わずに済みます。
ただ当選金を自分の口座に入れたり、収入に見合わない高額商品の購入などに使うと
結果的に宝くじで高額当選して現金で山分けしたことが税務署にばれるのです。
下手に税務署の目をごまかそうとすると悪質な脱税と見なされて追徴課税の上に
刑事訴追までされる恐れがあります。
手に入れた多額の当選金を贈与税・追徴課税・罰金で失う恐れがありますから、
ごまかそうとせずに素直に申告しましょう。