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郵便貯金が権利消滅したら払い戻しはできない?

テレビや新聞で「消えた郵便貯金」というニュースを見聞きしてドキッとした人も
多いかと思います。

そもそも郵便貯金が消えるとはどういうことなのか、
消えた郵便貯金は払い戻しができないのかなどについて詳しく見ていきましょう。

郵便貯金が消えるとはどういうこと?

ニュースで伝えられる「郵便貯金が消える」というのは、
郵便貯金の払い戻しを受ける権利が消滅することを指しています。

要するに郵便局に預けているお金が戻ってこなくなるということです。

ただ全ての郵便貯金が消えるというわけではなく、消える恐れがあるのは
 ・定額
 ・定期
 ・積立
といった定期性のある郵便貯金のみです。

一般の金融機関の普通預金に当たる
 ・通常郵便貯金
 ・通常貯蓄貯金
は権利消滅の恐れはありません。

どうなると郵便貯金の権利消滅が起こる?

何をどうしたら郵便貯金の権利消滅が起こるのかですが、
簡単に言うと「何もしなければ」郵便貯金の権利消滅が起こる恐れがあります。

定期性のある預貯金は一定期間お金を預けておくことを約束すると
通常の預貯金よりも金利が高くなるという金融商品です。

お金を預けておく期間が終了するいわゆる満期を迎えると、
 ・再度定期性のある預貯金として預ける
 ・通常の預貯金口座に振り替える
 ・現金で受け取る
といった手続きをしなければいけません。

定期性のある郵便貯金が満期を迎えたにも関わらず、
払い戻しなどの手続きをせずに放置しておくといずれ権利消滅となってしまうわけです。

放置すると言っても1年や2年では権利消滅は起こらず、
満期後20年間放置していると権利消滅となり払い戻しができなくなります。

20年と聞いてホッとした人も多いかもしれませんが、郵便貯金に限らず定期性のある
預貯金が満期を迎えたらできるだけ早く払い戻しなどの手続きを済ませましょう。

権利消滅の恐れがあるのは2007年9月30日以前の郵便貯金

定期性のある郵便貯金で権利消滅が起こるにはもう1つ「2007年9月30日以前に
預け入れた郵便貯金であること」という条件があります。

2007年9月30日までは国営の日本郵政公社でしたが、
2007年10月1日からは民営化された日本郵政株式会社となりました。

旧公社時代に郵便局に預け入れたお金は旧郵便貯金法の規定が適用されるため、
満期後20年放置で権利消滅となるのです。

民営化後の郵便局に預け入れたお金は預金保険法の対象で、
旧郵便貯金法は適用されないので満期後20年放置でも権利消滅は起こりません。

定期性のある郵便貯金の満期は最大で10年ですから、
1990年代半ば以降に預け入れしたお金は権利消滅してない可能性があります。

民営化前の郵便局で定期性のある郵便貯金をした心当たりがあるなら、
すぐに郵便局かゆうちょ銀行に確認してください。

ゆうちょ銀行は郵便貯金が消えるまで待っているわけではない

民営化前の郵便局や現在のゆうちょ銀行は、
郵便貯金が消えるのを何もせずに待っているわけではありません。

定額貯金など定期性のある郵便貯金が満期を迎えることを知らせる通知を
契約者の元に送っています。

その後一定期間ごとに手続きを促す催促状を発送していますし、
満期後20年を迎えた時点で「権利消滅のご案内」という催告書を送ります。

催告書の送付から2か月経過しても払い戻しの手続きを行わないと権利消滅となり、
郵便貯金が払い戻しができなくなるのです。

民営化前の郵便局や現在のゆうちょ銀行が再三に渡って手続きするように
通告しているのに、契約者がそれを無視し続けたので権利消滅となるわけです。

ゆうちょ銀行からの通知が届かないこともある?

実際に定期性のある郵便貯金が満期を迎えたのに郵便局やゆうちょ銀行から
通知が届かなかったという人も居るかもしれません。

郵便局やゆうちょ銀行に限らず全ての金融機関は定期性のある預貯金が
満期を迎える際には何かしらの通知を契約者に送っています。

金融機関から満期を知らせる通知が届かないのは、
金融機関に登録されている契約者の住所と現住所が違うからです。

引っ越しで住所が変わったにも関わらず金融機関に住所変更の届出をしていないと、
金融機関が発送するあらゆる通知が手元に届かなくなります。

郵便局やゆうちょ銀行は通知を発送したものの、該当する住所が無いもしくは住所と
宛名が一致しないなどの理由で郵便局やゆうちょ銀行に戻ってしまっているわけです。

引っ越しして金融機関からの通知が届かなくなっているなら、
できるだけ早く金融機関に連絡して住所変更の手続きをしておきましょう。

年間100億円以上の郵便貯金が消えている

いくら定期性のある郵便貯金と言っても、
ある程度の金額を預けているわけですから存在を忘れるわけがないと思いますよね。

ところが2020年度は約369億円、2021年度は約457億円もの郵便貯金が
権利消滅により消えてしまっているのです。

定期性のある郵便貯金に預け入れられる上限額が1300万円ですから、2021年度は
少なくとも3,500件以上の口座が存在を忘れられて権利消滅に至っています。

2020年・2021年に権利消滅した郵便貯金は1990年・1991年に預け入れられた
10年定期のもので、当時の金利は最大で年6%以上でした。
(2022年現在の金利は年0.002%)

1990~1991年は高金利の郵便貯金への預け入れが特に多かったため、
2020年と2021年は権利消滅の件数が多くなっているのです。

1992年以降はバブル崩壊による低金利時代に突入するので、
権利消滅によって消える郵便貯金額は大幅に減ると予測されています。

大幅に減ると言っても数十億から100億円ぐらいは消える恐れがありますから、
今の内に定期性のある郵便貯金を放置していないかチェックしておきましょう。

亡くなった親族の郵便貯金は要チェック

近しい親族特に親や配偶者など自分が相続に関係する親族が亡くなった場合には、
郵便貯金の有無は要チェックです。

亡くなった人の預貯金口座を全て把握できていれば問題ありませんが、
中にはへそくりのように秘密の口座を持っているケースがあります。

秘密の口座が定期性のある郵便貯金で遺族に存在を知られていないと、
満期を迎えているにも関わらず放置されて権利消滅に至ってしまう恐れがあるのです。

相続権のある遺族であれば亡くなった人が取引していた金融機関に対して
取引履歴の開示を求められます。

ゆうちょ銀行で取引履歴の開示請求をすれば、
満期を迎えた定期性のある郵便貯金があるかどうか確認できます。

定期性のある郵便貯金にはある程度まとまった金額が入っていますから、
遺産の相続漏れが無いようにしっかりと確認しておいてください。

全ての預貯金は相続税の対象

亡くなった人が所有していた預貯金は全て相続税の対象となります。

相続が発生した時点で相続人が定期性のある郵便貯金の存在を知らないからと言って、
定期性のある郵便貯金が相続税の対象から外れることはありません。

2037年まで郵便貯金の権利消滅の恐れがあり、亡くなってから数年後に
存在を知らなかった定期性のある郵便貯金の満期通知が届くことも考えられます。

相続税の申告期間は被相続人が亡くなってから10か月ですから、
1年後の満期通知で存在を知った郵便貯金分は申告漏れとなってしまいます。

満期となった郵便貯金を含めた相続財産の総額が相続税の基礎控除額に
収まっていれば問題ありません。

しかし既に相続税申告を済ませた後で郵便貯金の存在を知った場合には、
相続税の修正申告が必要です。

後で存在を知った郵便貯金をプラスすることで相続財産の総額が基礎控除額を
超える場合には、無申告で追徴課税となる恐れがあります。

余計に相続税を納めることになるかもしれないので、相続が発生した時点で存在を
知らない口座が無いかどうかはしっかりチェックしておかないといけないのです。

郵便貯金以外でも権利消滅は発生する?

定期性のある郵便貯金を満期後20年放置で払い戻しの権利消滅と聞くと、
他の金融機関の定期預金でも権利消滅が起こるのではと心配になります。

結論から言うと、現在のゆうちょ銀行を含めた全ての金融機関で定期性のある
預貯金の権利消滅が起こることはほとんどありません。

定期性のある預貯金に限らず金融機関の口座に10年間異動が無ければ
「休眠口座」となって管理権限が金融機関から預金保険機構に移されます。

管理権限が預金保険機構に移された口座に入っているお金は、
NPO法人など民間団体を通じて公益活動に使われます。

公益活動に使われるからと言って休眠口座に入っているお金が無くなるわけでは
ありません。

金融機関で休眠口座の払い戻し手続きをすれば、
休眠口座となった時点で預けていた金額は全額戻ってきます。

定期性のある郵便貯金で権利消滅が起こると口座に入っていたお金は全て国庫に
納付されてしまうので、どんな手続きをしても払い戻しができません。

預金保険機構は休眠口座のお金を全て使い切ってしまうのではなく、
手続きが行われることを想定してある程度の金額をプールしています。

ですから金融機関で手続きすれば預金保険機構がプールしているお金から
休眠口座となった時点の残高分を払い戻してもらえるというわけです。

「口座に異動が無い」とはどういうこと?

口座に10年間異動が無いと休眠口座となりますが、
そもそも「口座に異動が無い」とはどういう意味なのでしょうか?

口座の異動は簡単に言うと「取引」のことです。

契約者による口座からの出入金、手形や小切手などによる第三者による支払請求、
預貯金に対する情報提供請求が口座の異動に当たります。

金融機関によっては通帳の記帳やキャッシュカードを使った残高照会も
口座の異動として認められることがあります。

要するに契約者が口座を使う意思があることを金融機関側に示していれば
休眠口座にはならないということです。

長期間口座に異動が無いと通知が届く

ペイオフによって1つの口座につき預貯金が1000万円までしか保証されないことから、
複数の金融機関口座に預金を分けるケースがあります。

メインで使っている口座以外は長期間異動が無く、
知らない内に休眠口座になってしまうのではないかと心配になるかもしれません。

定期性のある郵便貯金で権利消滅が発生する場合と同様に、
休眠口座になりそうな口座については金融機関から通知が届きます。

10年異動が無い口座は休眠口座となるため、全ての金融機関では9年以上異動が
無い口座については契約者に休眠口座となる旨の通知を送っています。

通知が届いた時点で出入金など何らかの取引をすれば休眠口座となることを
回避できるのです。

ただし通知が届くのは口座に1万円以上の残高がある場合で、
残高が1万円未満だと通知は届きません。

また引っ越しをして住所が変わっているのに住所変更の届出をしていないと、
やはり休眠口座となる旨の通知が届かない恐れがあります。

金融機関の公式サイトで休眠口座について公告されますし、
金融機関に問い合わせれば自分の口座が休眠口座になりそうかどうか確認可能です。

休眠口座になると手数料が発生するケースも

金融機関口座が休眠口座となると、
口座を維持するのに手数料が発生するケースがあります。

海外では口座を開設するだけで手数料が発生するのが一般的ですが、
日本では現状口座維持に手数料は基本的にかかりません。

ただ休眠口座については手数料を徴収する金融機関が増えており、
 ・三菱UFJ
 ・三井住友
 ・みずほ
の大手3行では休眠口座の維持には手数料が必要です。

大手3行以外の地方銀行・第二地方銀行・信用金庫でも休眠口座に維持手数料が
かかるケースが多くなっています。

休眠口座の維持にかかる手数料は金融機関ごとに違いますが、
年額500~1300円程度です。

手数料は休眠口座から引き落とされる形で、
口座残高がゼロになった時点で自動的に解約となってしまいます。

海外の人にとっては普通でも、日本人からすると金融機関に口座を持っているだけで
手数料がかかるのはもったいないと感じます。

残高が公益活動に使われるなら意義がありますが、手数料に消えるのは
もったいないので休眠口座になる前に何かしらの取引を行いましょう。

金融機関口座の預貯金も消える可能性がゼロではない

先にゆうちょ銀行を含めた全ての金融機関で預貯金の権利消滅が起こることは
ほぼ無いと書きましたが、権利消滅が起こる可能性がゼロではありません。

実は商法において預貯金は「債権」に含まれており、
預貯金にも民法の債権消滅時効が適用可能です。

民法の債権消滅時効は
 ・債権者が権利を行使できることを知ってから5年
 ・債権者が権利を行使できる時から10年
となっています。

金融機関が異動が無い預貯金に民法の債権消滅時効を援用すれば、
5年で権利消滅して払い戻しができなくなってしまうのです。

現状では金融機関が預貯金に民法の債権消滅時効を援用することは無いので、
郵便貯金のように消えてしまう恐れはほとんど無いというわけです。

しかし将来に渡って金融機関が民法の債権消滅時効を援用しないとは限りませんから、
解約するなどして使っていない口座を作らないようにしないといけません。

まとめ

定期性のある郵便貯金を満期後20年放置すると、
権利消滅となって払い戻しができなくなってしまいます。

ただし郵政民営化前の2007年9月30日以前に預け入れたものが対象であり、
民営化後に預け入れた郵便貯金では権利消滅は起こりません。

2021年度には450億円以上の郵便貯金が権利消滅によって消えているので、
満期後に長期間放置している郵便貯金が無いかしっかりと確認してください。

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