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定期借家が「やめたほうがいい」と言われるのはなぜ?

「定期借家」は好条件なのに家賃が安いので利用を検討している人も多いですが、
一般的には定期借家は「やめたほうがいい」と言われています。

では、そもそも定期借家とはどんなものなのか、
定期借家はやめたほうがいいと言われる理由は何なのかなど詳しく見ていきましょう。

定期借家は期間限定の賃貸物件

定期借家は一般的な賃貸物件と違って、
契約期間が限られている期間限定の賃貸物件です。

一般的な賃貸物件は定期借家に対して普通借家と言われ、
こちらも2年程度の契約期間が設けられています。

しかし普通借家は契約更新が原則可能で、借主が契約更新を希望すれば
余程の理由が無い限りはオーナーは更新を拒否できません。

対して定期借家は契約更新が原則認められておらず、
契約期間が満了した時点で退去しなければなりません。

オーナーの許可があれば定期借家でも契約更新は可能ですが、
許可が下りるケースは多くなくて基本的には契約期間満了で退去となります。

普通借家にも定期借家にも契約期間があるものの、
普通借家は原則契約可能で定期借家や原則不可能というのが大きな違いです。

定期借家として貸し出している理由

普通借家ではなく定期借家として一定期間だけ賃貸物件として貸し出すのには
いくつか理由があります。

現状定期借家として貸し出されている理由として多い1つが
「転勤や移住に伴うもの」です。

オーナーが転勤や移住で一時的に自宅を離れている間、
自宅を賃貸物件として貸し出します。

契約期間が満了するとオーナーが戻ってきて物件を自宅として使うので、
契約更新ができないわけです。

また建物は使わないと傷むのが早くなるため、
短期間でも賃貸として使って自宅の状態を維持するといった目的もあります。

これまで自宅として使っていて、戻ってきても自宅として使うつもりですから、
設備などが整っている好条件の物件が定期借家には多いのです。

さらにオーナーは定期借家で儲けるつもりが無く、
固定資産税が賄える程度の相場よりも安い家賃になっていることが多いわけです。

契約満了後に取り壊し予定

定期借家として物件を貸し出す理由としてもう1つ「取り壊しまでの期間を埋める」
というものが多く見られます。

耐震性能などの問題で建て直しが必要で取り壊しが決まっている物件を、
取り壊すまでの一定期間定期借家として貸し出すというケースです。

建物を取り壊すには行政の許可や周囲の建物へ配慮が必要で、取り壊しが決まってもすぐに取り掛かることはできません。

業者の都合もあるため、取り壊すことが決まってから実際に取り壊すまでに
年単位の時間がかかることもあるのです。

その間建物を遊ばせておくのはもったいないので、
取り壊しが始まるまでの期間定期借家として貸し出すわけです。

契約が満了したら建物は取り壊されてしまいますから、当然契約更新はできません。

取り壊し費用や建て替え費用の足しになれば良いぐらいのため、
相場よりも安い家賃で貸し出されることが多くなっています。

オーナーが借主を選ぶため

物件のオーナーが借主を選ぶために普通借家ではなく定期借家としているケースが
あります。

普通借家だとかなり悪質でない限りは、
借主が契約延長を希望するとオーナーは拒否できません。

悪質ではないもののオーナーとして歓迎できないような借主であっても
契約延長を拒否できないのです。

定期借家であれば原則更新なしですから、オーナーが歓迎できない借主には
契約期間満了と同時に退去してもらえます。

歓迎できない借主には短期間で退去してもらえるように、
オーナーがあえて普通借家ではなく定期借家としてケースもあるのです。

再契約前提の定期借家もある

定期借家は契約の更新ができないのが一般的ですが、
中には再契約を前提とした定期借家も出てきています。

最初の契約期間を「試用期間」として、
契約期間中にトラブルが無ければ再契約が可能といった形です。

普通借家では借主側に大きな問題が無いと、
オーナーの意思だけで契約延長を拒むことはできません。

簡単に賃貸契約を破棄できないので、
細かいトラブルを重ねる借主に物件から出て行ってもらうのが難しいのです。

しかし定期借家は契約期間満了で原則退去ですから、
トラブルメーカーである借主には合法的に出て行ってもらえます。

特にトラブルが無ければ再契約という形で契約を延長、
長期間に渡って借主に住んでもらうことになります。

定期借家の「再契約可能だが契約満了で原則退去」というルールを上手く活用して、
オーナーが借主を選ぶというわけです。

定期借家はやめたほうがいいと言われる理由

設備が整っているなど条件が良くて家賃も安い定期借家について
「やめたほうがいい」と言われる理由は何なのでしょうか?

定期借家はやめたほうがいいと言われる大きな理由の1つが
「長く住み続けられない」ことです。

先にも書いたように定期借家は契約更新が原則不可となっており、
契約期間が満了すると退去となります。

オーナーが契約更新を認めてくれるケースは稀で、
基本的には定期借家に長く住み続けることはできません。

定期借家に入居した時点から次の家について考えなければいけないのは
大きなデメリットです。

途中解約が難しい

絶対できないわけではありませんが、定期借家では契約期間中の途中解約が難しい
ケースが多くなっています。

定期借家は貸し出す期間が決まっていることが多く、
途中解約すると貸し出せる期間が短くなって次の借主を探すことが難しくなります。

転勤などやむをえない事情であっても途中解約が認められず、
残り契約期間の家賃や違約金を請求されることがあるのです。

定期借家の中には5年10年と契約期間が長いものもあり、こうした契約期間の
長い物件は違約金も高くなるケースが多いので注意しなければいけません。

家賃交渉はできない

定期借家ではオーナーや仲介業者との家賃交渉は基本的にできません。

2~3年の短期なら周辺の家賃相場が変わることは少ないですが、
5年10年の長期になると家賃相場が変動することは十分に考えられます。

家賃相場が上振れすれば家賃交渉できないことがプラスになりますが、
下振れするとマイナスとなります。

何年も住み続ける内に周辺の家賃相場が下がったとしても、
定期借家では契約時の家賃を払い続けないといけないのです。

定期借家では賃料不減額特約が有効

物件の賃貸借に関するルールを定めた借地借家法で、
定期借家の賃料不減額特約が認められています。

借地借家法は物件のオーナーだけでなく借主の権利を守るための法律であり、
借主に不利になる賃料不減額特約は通常は無効とされているのです。

要するに周辺の相場に対して現在の家賃が高いと借主が感じた場合には、
オーナーや仲介事業者に対して家賃減額の交渉ができるということです。

交渉ができるだけで必ず減額が認められるわけではなく、
減額するだけの明確な根拠が無ければ認められる可能性はほぼゼロとなっています。

ところが同じ借地借家法に定期借家については例外的に賃料不減額特約が
有効であるとされています。

契約書に賃料不減額特約に関する文言があると、
家賃が高いと借主が感じても契約期間中に家賃減額交渉はできないのです。

契約期間中の減額交渉はできませんが契約時には可能なので、
事前に周辺の相場を調べて定期借家の家賃が高い場合には契約時に交渉しましょう。

コスパは高いが家賃も高い

一般的に定期借家は家賃が安いイメージですが、
特に大都市圏では相場よりも家賃が高いケースが少なくありません。

不動産情報のアットホームが行った調査によると、2021年の東京23区内の
定期借家の家賃は普通借家に比べて2~3割高くなっています。

家具や家電が付いている物件だと家具家電に費用がかかりませんから、
少し家賃が高めでもコスパは高くなります。

ただ単純に家賃だけで考えると安くないことも多いので、
安い物件を希望するなら定期借家は選択肢から外さざるをえないケースも多いです。

再契約時にも初期費用が発生

稀なケースではありますが、
定期借家で契約更新をオーナーが認めてくれることがあります。

厳密にいうと定期借家の場合は契約更新ではなく再契約となるため、
再度初期費用を支払わなければいけません。

普通借家の契約更新では
 ・敷金
 ・礼金
 ・不動産業者の仲介手数料
といった初期費用は基本的に発生しないです。

ところが定期借家の契約更新は再契約なので、
敷金や礼金などの初期費用を再度支払う必要があるのです。

定期借家で契約更新が認められることが稀ですが、
認められたとしても借主側の金銭的負担が大きいので注意しないといけません。

定期借家にもメリットはある

一般的にやめたほうがいいと言われることが多い定期借家にも少なからずメリットが
あります。

定期借家の大きなメリットの1つとして「通常の賃貸物件よりも建物がきれい」で
あることが挙げられます。

特にオーナーが転勤などで一時的に空けるので定期借家として貸し出している物件は、
外装も内装もきれいなケースが多いです。

定期借家として貸し出される直前までオーナー自身が生活していたわけですから、
ある意味きれいなのは当然なのです。

オーナーが自宅として使っていない物件でも、普通借家に比べるとメンテナンスに
力を入れる傾向が強いので外装も内装もきれいなことが多くなっています。

設備が整っていて周辺の環境が良い

定期借家には設備が整っていて、周辺の環境が良い物件が多いです。

オーナーが自宅として使っていた物件であれば家具や家電は一通り揃っているので、
家財道具を揃える手間とお金がかかりません。

物件が築浅だとキッチンや風呂、トイレにも比較的新しい設備が導入されています。

またオーナーが自宅を構えると決めた土地だけに、
定期借家の周辺環境は良いケースが多くなっています。

駅が近かったり、コンビニやスーパーなどの商業施設、公園や学校といった子育てに
欠かせない施設が徒歩圏内にあったりするのです。

普通借家でこれだけの好条件が揃った物件を見つけることは難しく、
好条件の物件を見つけやすいのは定期借家ならではです。

更新手続きと更新料が不要

定期借家には更新手続きと更新料が不要というメリットもあります。

一般的な賃貸物件である普通借家だと、規定の契約期間が満了する前に
更新手続きを行って更新料を支払わないといけません。

更新手続きでは、新しく作られた賃貸借契約書2通に署名・捺印してオーナーと
借主が1通ずつ保管します。

さらに更新料として家賃1~2か月、加えて
 ・次月の家賃
 ・更新手数料(0.5か月分)
 ・火災保険料(1~3万円)
 ・家賃保証の更新料(家賃の0.3~1か月分)
なども支払うことになります。(カッコ内は金額の目安)

もちろん新規で契約するよりは安く済みますが、
それでも更新ごとに数十万円の費用がかかるのは痛いです。

定期借家には基本的に更新が無く、
契約期間を更新する場合には再契約という形になります。

更新が無いため契約期間満了が近付いても更新手続きを行う必要は無く、
更新料など契約更新にかかる費用も不要です。

ただし再契約の際には新規契約時と同様に敷金などが必要となるので、
普通借家の更新時よりも費用が嵩みます。

初期費用が安いことが多い

定期借家の契約時に必要となる初期費用は普通借家に比べて安いケースが
多くなっています。

普通借家を契約する時に必要な初期費用は
 ・敷金 家賃1か月分
 ・礼金 家賃1か月分
 ・前家賃 家賃1か月分
 ・仲介手数料 家賃0.5~1か月分
 ・火災保険料 1.5~2万円
 ・保証料 家賃+共益費0.5か月分
などとなります。

例えば家賃10万円の物件を借りるとすると、
初期費用として合計で約41~47万円程度必要です。

定期借家の場合は物件ごとに違いはあるものの
 ・敷金 家賃1か月分
 ・礼金 なし
 ・前家賃 なし
 ・仲介手数料 家賃1か月分
 ・火災保険料 なし
 ・保証料 なし
といったケースが多くなっています。

火災保険料や保証料は必要となることがあるものの普通借家に比べると安く、
敷金すら不要といったケースも少なくありません。

家賃10万円の定期借家だと初期費用は10~20万円と、
普通借家の半分以下で済むことも多いのです。

まとめ

定期借家はやめたほうがいいと言われるのは、
 ・契約更新ができない
 ・途中解約が難しい
など制約が多いからです。

ただ好条件で家賃や初期費用が安い物件も多く、デメリットをしっかりと理解しておけば
「やめたほうがいい」と言われるほど悪くはありません。

最近は再契約を前提にした定期借家も増えてきていますから、
普通借家とともに定期借家を選択肢に入れて検討するのも良いのではないでしょうか。

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